トレーニングジムでせめて週に1日1時間半だけでもリハビリを続けようとしたが、なかなかまとまった時間を定期的に取れなかった。やりたいだけ思う存分リハビリができる人がうらやましかったものだ。というのも、手術するに当たって、医療関係者から「どうせすぐに、リハビリをやめるだろう」と言われていたからだ。くそ!絶対スポーツ復帰してやる!とむきになってした手術。ようやくの沢登り。この3年間めげずに、こつこつトレーニングを積んできた甲斐があった。
2007年9月2日の早朝、田井ノ瀬橋に着くと、激しく雨が降っていた。これは中止かなあと思っていたら、私より先に来ていた大西さんがぼそっと「そのうち止んで行けるでしょう」。大西さんの予想通り、雨はだんだんと小降りになって、東の空から真っ赤な朝日が見えてきた。この、朝日の方向に、めざす下多古川があるのだ。その後、ぞくぞくと参加者が到着。計7名(寺下、山路、池永、大西、今井、須部、しもたま)で出発。ところが、またもや雨が。途中のスーパーで一時下車。リーダーの寺下さんが「これは今日は中止やなあ」と言って、解散の打ち合わせをしていると、そんなときに限って晴れてくる。「もう、どっちや」と怒る寺下さん。そのはずである。今週は、そもそも日曜まで4日連続雨の予報。こりゃ週末はあかんかも、、、と思っていたら、実際は木曜からほとんどふらなかった。ひょっとしていけるかなあと思っていたら、再び日曜に雨マークの予報。金曜日に沢中止の連絡が全員へと回ったものの、やっぱり晴れるかもしれないので、直前に行くかどうか考えようということになった。その当日がこの紆余曲折である。寺下さん、とってもお疲れ様である。
下多古につくと、ウソの様にかんかん日和。楽しい沢登りが始まった。初級の沢ということで、みんな気楽な気分。わざと小さな滝を選んで直登してみたり、登るのを競争してみたり、遊び心いっぱい。滝によっては、水量がすごくて、手探りで岩をつかみながら水圧に逆らって登るところあり、つめたい淵を泳いで横切るところあり、下界の暑さをよそに涼しく気持ちよい。一ヶ所、前にも後ろにも進めず、お助けロープを寺下さんと池永さんに出してもらったところがあった。まだまだ、沢の修行が足りないようである。新人の須部さんは、チャレンジ精神旺盛で、お助けロープもなく、するすると岩を登っていった。ちょっとくやしかった。この沢にはカエルが多くて、いろんな色といぼのカエルが岩にへばりついていて、何度も岩と間違えてつかみかけた。ヒルがいなくて、私は快適だった。が、カエル嫌いな人はそうでなかったかもしれない。ひとつ気がかりなのは、1.5mほどの滝を登るときに、足場が崩れて須部さんが滑落してしまったことだ。私が横から話しかけなければ、すんなり登っていたはずなので、悪いことをした。あやうく、顔から落ちるところで、うまく肘から受け身を取っていた。後で肘が腫れてこなければいいのだが。
予定より30分遅く出発し、いろいろ遊んだわりに、計画書どおりの時間に最終ポイントについてしまった。時間と体力があると言うことで、更に上流のびわの滝を目指す。ここからは傾斜が少なく、スピードが上がって、足腰に負担がかかる。足がもつれるかと思ったが、8月にみかん山や、自転車、ランニングで鍛えた甲斐があり、余裕を持ってびわ滝までたどりつくことができた。いっしょにならんでの記念撮影。今井さんの手には「子どもにいい土産ができた!」と、びわ滝で捕まえたカブトムシが!
帰りに温泉につかり、疲れた筋肉を休めて、これまた予定の時刻に田井の瀬に到着。解散となった。この沢登りで、明日から仕事だということをしばし忘れることができ、楽しい仲間と過ごす喜びがあり、さらに筋力アップを果たし、満たされた気分だった。筋力アップのお陰で、職場の階段の昇降もすいすい、柔道も自分より重い子と練習しても余裕たっぷり。生活にゆとりができて、いいことずくめだった。
一度失った機能を復活させるには、地道なトレーニングが、それも日常生活以上の負荷が必要である。日常生活は、他の筋肉やもう一本の足でごまかせることも多いので、どうしてもその機能を使わずに入られない状況に追い込む必要がある。私の場合、手術で2ヶ月ほど体重を左足にかけられなかったため、筋力が低下し、必要な神経系統のバランスも体が忘れてしまっていた。さらに、かわりの靱帯を作るために太ももの裏の筋肉を2本も失ったし、手術で神経を傷つけたために、すねから下の感覚が2~3割ほどに鈍ってしまっていた。触覚、痛覚ばかりでなく、温度感覚も減った(2010年に、ようやく左足の指先まで感覚神経が全てつながり、触角、痛覚、温度感覚が8~9割まで回復した。人間の神経は再生力がある)。こういった感覚を取り戻すためにも、激しいトレーニングが必要だった。筋力のほうは、普通のリハビリで日常生活レベルになっていたが、柔道で必要な筋肉は柔道で、沢登りで必要な筋肉は沢登で培うのが近道なのだ。実際、柔道に必要な筋力と感覚がはっきり戻ってきたのは、柔道完全復帰を果たした、この夏からだ。柔道の乱取り練習で、茶帯相手に激しく動いているうちに、足先からの刺激がきっかけで、切れていた神経と神経に連絡通路が新たにできたのだろうか。足の指で大地をぐっとつかんでいると、すねにぽかぽかと暖かいものが流れてるのが感じられる。まるで凍っていた足が暖まって、“じんじん”しているかのようだ。血行がよくなったのは本当だが、温感がもどった証拠だと思われ、とても感激だ。日常生活に余裕が生まれてうれしかった。
こうして、今回の沢登りだが、思ったほど感覚を忘れていなくて、歩いてもあまりばてず、楽しむことができた。日記にようやく、本物の復活日記が書けた。また、日記の続きを書けるような山に行きたいものだ。
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